日本株は米国株に比べ何が劣るのか 20210906

 ここ何年か日本では米国株投資が大人気である。
 チャートを見比べると明らかだが、リターンは米国株の方が圧倒的に大きい。

 大きなテーマになるが、この理由について自分なりにまとめてみた。

 

日本株は米国株に比べ株主還元が低い。

配当の比較 

 日本の企業の経営者は株主に向いていないと感じる。

 しかし、株主還元の代表である配当性向は日本の平均のほうが低いと思っていたが 調べると全体の平均でみるとは米国と日本はあまり変わらないことが分かった。

配当性向の日米比較 (2019年)

米国:約50% SP500構成銘柄全体
日本:約43% 東証1部全体

 本当に日本株がこんなに利益を配当に回しているのかと思うが、調べたらこのような結果だった。

 確かにここ5年くらいは日本企業も配当を増やしてきて増配する企業が多くなっている印象がある。
 

 現時点では米国の方が配当性向は高いが、今後はこの差は縮まっていくのだろう。

 ※配当性向
  純利益に対する配当の割合。

自社株買いの比較

 自社株買いについては日米で大きな違いがある。

自社株買いの日米比較(2019年)

米国
全体の純利益に対して約 110%(115兆円) 
SP500構成銘柄全体

日本
全体の純利益に対して約  23%(7兆円) 
東証1部全体

 これは過去記事「配当についての考え」でも書いたが、自社株買の方が税金がかからず、配当より良い株主還元方法ではある。


 自社株買いは関係当局の意向に関わらず、経営者の判断で実行出来る。

 米国では役員報酬としてストックオプションの付与が一般的なので、株価を上げる動機が強くなり自社株買いが盛んになっている。

 とにかく、自社株買いが多いのが米国株が好調な理由の一つであるのは間違いなさそうだ。

※自社株買い
 自社の株を市場から買い取り、消却すること。これにより発行株数が減るので、経営状態が変わらず純利益が変わらなければ、一株当たり純利益が大きくなり、株価が上昇する。

米国人と日本人のリスク選好度の違い

家計の株式保有割合比較(2016年)

米国の家計保有資産
株式:約42%(投信含む)
現預金:約14%  
その他は年金、保険、不動産

日本の家計保有資産
株式:約19%(投信含む)
現預金:52%
その他は年金、保険、不動産

 家計が保有する資産の割合をみると、米国は日本の2倍以上、株式保有の割合が大きい。

 日米の保有株の内容は分からないが、おそらく日本人は日本株が多いし、米国人は米国株が多くなる。

 米国株は好調だから保有する米国人が多いのか、あるいは米国人が単に株好きだからなのかは分からないが、米国人が米国株が多く保有するのは合理的といえる。

米国人は米国株、日本人は日本株を保有する、という前提で考えると・・・

 上の円グラフの現預金保有率をみると分かる通り、米国人の現預金保有率は日本のそれの1/3以下だ。

 米国株は好調だし、米国人にとっては低い金利しかつかない現預金より、株式に資金を置いておこうと考えるのは当然だろう。

 日本では90年代以降、デフレが続いているので、株より現金が有利な状況がずっと続いている。日本人の資産が現預金に偏るのは理論的にも感覚的にも正しい。

 日本の株が上がらないのはデフレによって企業の利益が伸びないことが大きいとされているので、感覚的には良く分かる。

その他の要因

米国株の好調の理由として、今回の記事では書ききれないので、簡単に以下。

政府主導で未来への種まきをしていた。

 1980年代、米国が日本に経済的に攻勢を受けていた時期でも米国はきちんと政府主導で産業の種まきをしていた。

 例えば一例をあげると、インターネットも携帯電話ももとは軍事技術であり、そういった技術を民生用に使えるように政府が主導してていた。これによってシリコンバレーを中心としたIT企業が隆盛を極めていった。

投資銀行の発達

 これも1980年代以降、強かった米国の製造業が日本にやられ始め、金融業が盛んになり始めた。投資に特化した投資銀行やファンドが大きくなり、機関投資家による株式購入が増えていった。

その他の理由

  • 日本の会社員の士気は米国のそれに比べて有意に低い。
  • 米国の経営者はプロ経営者が多い。そのため、リストラが横行し労働者の流動性が高くなり、他の産業の経済活動が活発になる。(経営者の仕事はリストラだけではないが)また、外部から人を招くことが多いので経営陣に専門家をいれて経営のテコ入れしやすい。
  • 米国では401Kなど会社員のための税制優遇された口座が昔からある。
    日本では確定拠出年金があったが、導入している会社は少ない。何年か前から、ようやくiDeCoや積立NISAが始まったばかり。

 など。

 上記は興味のあるテーマであるが、今回は書ききれないので今後、書いてみたいと思う。

まとめ

 冒頭のグラフで示したように、35年間のリターンの差が10倍近くだと、日本株より米国株に投資するのが普通なのだと思う。

 1990年のバブル崩壊以降、日本はデフレ続きで株よりも現預金を持っていた方が、実質リターンが大きかったのは確かだ。大衆の感覚というのは長期的にみると正しい場合が多いということ。

 最近は日本でも米国株投資がしやすくなったし、情報も取りやすくなっているので、日本での米国株人気は今後も続くと考えられる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました